2010年06月26日

NYLON100℃ 35th SESSION「2番目、或いは3番目」。

半年に一度、ナイロン100°Cを見ると、一気に演劇熱が上がる。
今回は、何らかの事情で滅びかけた街から、「さらに不幸な街」を救済しに向かった男と女たちが、救済すべき街で救済されるお話である。
とにかく、大倉孝二が出落ちであり、この人の演技は日に日に神がかってきていて、それはそれですごいし、犬山イヌコが気づかないうちに舞台上にいて、あの声で婆さんを演じているなんてそれだけで凶器/狂気だし、小出恵介のオーラはそれに負けず素晴らしいものであり、それでいて、幸せをどこに求めるか(現状で満足できるか、自分より下位の存在を設定しないと幸せになれないか)という問題から、非常に奇形的な拘りを示す緒川たまきであったりと、役者・脚本・演出が完全に噛み合った名作。

http://www.sillywalk.com/nylon/info.html
posted by 広域 at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月20日

[M_2010_10]『告白』。

『下妻物語』も『嫌われ松子の一生』も見ていないのだが、湊かなえ『告白』を読んでそれなりに楽しめた者にとって、予告編における生徒たちのダンスシーンがいかにも違和感アリアリで、それがゆえに劇場に足を運ばざるをえなかった時点で、すでに中島哲也の術中にはまっていた。
そのシーンについて述べると、それ自体が「クラスにおける違和感」を表現するためのものであって、そこだけ切り取って予告編とすることで、「湊かなえ原作にはなかったシーンが挿入されている」かのように錯覚させられていたが、あのシーンは完全にあの文脈においては必要なシーンだった。
その上で、生徒たちの醜悪な空気(表情ではない、そこまでの演技はまだ出来ていない)を冷静にカメラに収め、『告白』前半の嫌な空気を、ともすれば原作の数倍もよく表現していたように思う。

告白とはconfessionであり、神の前でペルソナを外して何もかもをぶちまけることであるが、後半、ペルソナを外して、その執着を顕にする登場人物たちは、一瞬ホラー映画かと見まごうほど、残忍な人間として立ち現れていた。演技が云々に回収出来ないすごさがあった。

小説と映画の対比に意味はないのであるが、告白内容に重点のあった小説版から、告白が持つ仮面剥奪=表情に重点を移した映画版へ、明らかな「発展」であったと思う。
posted by 広域 at 20:21| Comment(0) | TrackBack(0) | カンショウすること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アメリカ人と放物線。

サッカーワールドカップが日々盛り上がる中、アメリカではNBAのファイナルが行われた。
今年はレイカーズが7戦目を逆転で勝利し、チャンピオンになったわけだが、その速報映像に映し出された3ポイントシュートが非常に美しかったので印象に残っている。
選手の(NBAをチェックしなくなって長いので抽象的な表現だがご海容を乞いたい)手を離れたボールが、美しい放物線を描いて、リングに吸い込まれていく。
放物線の頂点で一瞬、コート上の運動が停止し、観客も息を飲む間が発生し、それが重力に導かれ、音を立ててリングを通過した際に歓声が爆発する。
そんな光景を見て、そういえば最近似たようなことを感じたなと記憶を呼び起こしてみると、それはベースボールの試合、それもホームランのシーンだったことに思い至った。

アメリカの4大メジャースポーツといえば、ベースボール、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケーだが、前3者は、いずれもボールが放物線を描くイメージによって彩られている。
ヨーロッパでは、これらのスポーツが必ずしもメジャースポーツではないという事実に照らし合わせると、アメリカ人がこれほど「放物線」型球技を愛していることは、一種の民族誌的奇習といってよいだろう。

では、なぜ彼らは、これほど放物線のイメージを愛するのか。
ここで、「ミサイルのメタファーだ!やはりヤンキーどもは戦争が好きなんだ!」ということはたやすい。しかし、次の歴史的事実がその解釈を妨げる。
すなわち、MLBの発足が1903年、NFLが1920年、NBAが1946年であるのに対して、アメリカで最初のミサイルが開発されたのが1955年であるという事実がこれである。
ミサイルよりも、これらのスポーツが組織化された時期の方が早いのである。
仮にアメリカ人が、放物線のイメージにミサイルを重ね合わせ、それがゆえにミサイルをも愛すると仮定しても、それは「放物線を愛するという民族誌的奇習の一つの現われ」ととらえるしかない。

改めて問う。アメリカ人はなぜ、これほど放物線に魅せられるのか。
まず、放物線の形状からアプローチすることができる。
放物線とは、「地表(つまり重力下)で投射した物体の運動(放物運動)が描く軌跡」を意味する。
その形状はなだらかな傾斜と頂点を持ち、左右が概ね対象になる点に特徴がある。
フロイトならば、これをファルスととらえることになるだろう。
なるほど、アメリカにおいてサッカーがいまなおメジャースポーツとしての地位を獲得出来ないのは、サッカーのゴールネットが子宮、ボールが精子を意味する「着床のゲーム」であり、男性性の象徴たるファルスのイメージがそこに介在しないからだととらえることは一つの説明ではある。
(それは同時に、アメリカ女子サッカーの強さを裏付けるかもしれない)
しかし、放物線がファルスだ、とも断定し切れない。放物線の有する丸みは同時に女性性を表現する(例えば乳房)とも解釈可能だからだ。
(また、放物線=ファルスととらえると、「やっぱりアメリカ人どもはマッチョだぜ!」というステレオタイプに回収されてしまう嫌いがある)

では、アメリカ人の放物線愛はどこからやってきたのか。
もう一度放物線の定義を確認すると、そこには、「地表(つまり重力下)から【重力に抗って】射出される」という特徴が看取される。
それは同時に、「いずれは【重力に従って】出発点とは異なる地点に着陸する」ことを含意する。
この特徴とアメリカを対比するとき、想起されるのは、ピルグリム・ファーザーズの物語である。
弾圧から逃れた巡礼の始祖たちは、おそらくは神の法則によって、アメリカという理想郷に到達した(少なくとも、そう考えられている)。
これを放物線と照合すると、弾圧という重力から解き放たれ(地表からの射出)、それが神の力によって約束の場所にたどり着く(重力に従った出発点とは異なる地点への着陸)という形で符合する。

ホームランにアメリカ人が熱狂するのも同じ理路だと考えられる。
すなわち、「フィールド=戦場」から、「スタンド=安全地帯」に「ボール=始祖」が到着するから、「得点」に結びつく。
バスケットボールの得点も、ネットが「safety net」のイメージと結びつくことで、同種のロジックに結びつけられようし、アメリカンフットボールにおいて、混戦地帯を抜けたパスに熱狂するのも、同じところであろう。

これがこのエントリの結論である。
すなわち、アメリカ人は、放物線に、アメリカ建国の物語を重ねあわせている。
しかし、この結論は、当たり前といえば当たり前である。
内田樹がすでに指摘しているように、アメリカ人はその建国の物語に立ち返ることでアイデンティティを確認する。
その繰り返し作業の中で、アイデンティティ強化に資するものが選択的に生き残るであろうし、それがスポーツの領域では、放物線型球技に結びついていた、ということであろう。

この解釈では、メジャースポーツの4つ目であるアイスホッケーの説明が困難である。
直線型スポーツの代表格である氷上の格闘技が放物線型である3つと同じロジックに回収できるものなのか、それとも独自の背景があるのかは、誰かの分析をまたざるを得ない。

というわけで、久しぶりに超長文を書き散らしたわけである。
なお、当然私はこの分野については素人であるので、事実関係の誤りなどあっても、優しくスルーしていただけると助かる次第である。
posted by 広域 at 00:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 書きちらすこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月12日

[M_2010_09]『アウトレイジ』。

意味はない。ただムチャクチャ面白い。

という前評判を耳にした。

たまたま時間が取れたのが公開初日だったというだけで

特に公開初日でなければならない理由はなかったのだが

気がついたらチケットを抑えていた。


端的にいって、ひたすら人が血まみれで倒れていく映画であって

悪いヤツラが暴力振るいまくってるのって

現実だと迷惑だけど、映画だと面白いよね、というお話である。

とにかくテンポと映像で魅せまくるので、まったく飽きない。

また、血まみれなのだが、そこですら笑いを取ってしまうあたりに

北野武の底力を見る。
posted by 広域 at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | カンショウすること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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