2008年09月06日

辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ(下)』。

野球においては、「スーパーヒット」は存在せず

ただ「クリーンヒット」が存在するだけである。

教科書通りのスイングで、右方向へ

ないしセンター返しをするのが美しい。

辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ』を読んだ第一印象は

文字通りの「クリーンヒット」である。

目新しいトリックが展開されるわけではない。

むしろ、どこかで見たことのある(ベタな)トリックしか登場しない。

文体の上でも、森博嗣と伊坂幸太郎をミックスして

若干ウェットにしたようなもので、新しいものではない。

しかし、それらが不自然でない文脈で、フェアな形で提示されると

「スコン」とはまり、「やられた」という感じに至る。

新規で珍奇なトリックを用いなくても

ミステリとして上質のものが出来上がるという典型例であり

それを可能にしているのが、ウェットで情感的な文章を用いつつも

物語のパーツを極めてロジカルに

読者の心情を掌で転がすかのように配置する

辻村深月のストーリーテラーとしての能力である。


個人的には、ウェットで情感的な文章で入るなら

もっとドロドロの心情を描いて欲しいと感じるが

(むしろ情感的がかえって登場人物の悩みを薄っぺらにしている。

文庫版解説のように、本書に「共感」を覚えることはない)

本書をミステリとして読むならば、その点は些事だろう。

posted by 広域 at 18:06| Comment(2) | TrackBack(1) | 読むこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
表示されないようなので、URLを置かせていただきますね。
http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-1331.html
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
Posted by 藍色 at 2009年12月06日 17:54
>藍色様
コメント&TBありがとうございます。
当ブログは、TB承認制にしておりまして(というか、スパムTBが異様に多いので、チェックもろくろくしておりませんで)、リアクションが遅くなりまして、失礼いたしました。
TBをお返ししましたので、ご確認ください。
2009年からは、書評はすべてメディアマーカー(http://mediamarker.net/u/kouiki/)で管理しておりますので、よろしければこちらもご愛顧いただければ幸いです。
Posted by 広域 at 2009年12月06日 22:12
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/106113002
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

子どもたちは夜と遊ぶ 辻村深月
Excerpt: 同じ大学に通う浅葱と狐塚、月子と恭司。 一方通行の片想いの歯車は、悲しくも残酷な方向へ狂い始める。 散りばめられた伏線。下巻で激し...
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2009-12-06 17:12
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。